第31話|幸いな人とは 山上の垂訓①

小説

第四章 西暦三十一年

第一節 春

第四項 山上の垂訓

1.幸いな人とは

イエスと選ばれた12弟子たちは、山腹の平らな場所で足を止めた。
眼下に広がるガリラヤ湖の水面に春の日差しが乱反射し、湖から吹き上げる爽やかな風が、草花を揺らしながら、ほほのあたりを通り過ぎていく。

「先生! どうか私の息子を!」
「私も癒やしてください!」
人々は、何とかイエスに触れようと、我先にと押し寄せた。
イエスに触れるたび、イエスから力があふれ出て、人々は次々と癒やされていく。

病に苦しむ人、家族に支えられて歩く人、邪悪な天使に苦しめられている人々――イエスは一人一人に目を留め、そのすべてを癒やしていかれた。

「本当に……次々と治っていく。」アンデレが驚きの声を漏らす。

やがてイエスは、目の前の平地いっぱいに広がる群衆を静かに見渡されると、斜面を進み、少し高い所に登られた。弟子たちもその後に続く。
イエスは腰を下ろされると、弟子たちがそのそばに集まった。
そしてイエスは目を上げ、弟子たちの方をご覧になると、口を開いて教え始められた。

「幸いです、霊において貧しい人たちは。なぜなら、天の王国は、その人たちのものだからです。

今、飢えている人々は幸いです。あなたがたは満たされるからです。

今、泣いている人々は幸いです。あなたがたは笑うようになるからです。

幸いです、悲しんでいる人たちは。なぜなら、その人たちは慰められるからです。

幸いです、柔和な人たちは。なぜなら、その人たちは地を受け継ぐからです。

幸いです、義に飢え、また渇いている人たちは。なぜなら、その人たちは満たされるからです。

幸いです、あわれみ深い人たちは。なぜなら、その人たちはあわれみを受けるからです。

幸いです、心において清い人たちは。なぜなら、その人たちは神〈τὸν θεόν〉を見るからです。

幸いです、平和を造る人たちは。なぜなら、その人たちは神〈θεοῦ〉の子たちと呼ばれるからです。

幸いです、義のために迫害されてきた人たちは。なぜなら、天の王国は、その人たちのものだからです。

あなたがたは幸いです。人々が、わたしのためにあなたがたをののしり、仲間外れにし、迫害し、そして偽って、あなたがたに敵対するあらゆる悪いことを言うときは。
喜びなさい。飛び跳ねて大いに喜びなさい。なぜなら、あなたがたの報いは天において大きいからです。
というのも、彼らの父祖たちも、あなたがたより前にいた預言者たちを、そのように迫害したからです。

しかし、富んでいる人々、あなたがたには災いがあります。あなたがたは、自分たちの慰めを受け取ってしまっているからです。

今、満腹である人々、あなたがたには災いがあります。あなたがたは飢えるようになるからです。

今、笑っている人々、あなたがたには災いがあります。あなたがたは悲しみ、そして泣くようになるからです。

すべての人間たちがあなたがたを良く言うとき、あなたがたには災いがあります。彼らの父祖たちも、偽預言者たちに対して同じことを行っていたからです。」

丘の上を風が静かに吹き抜ける。
誰も口を開かなかった。その言葉の一つ一つが胸に深く沈んでいくようだった。

イエスは再び人々を見渡し、穏やかに続けられた。

挿絵・ビジュアル制作には、ChatGPT および Google Gemini を使用しています。

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