第41話|やもめの息子を復活させる【はじまりに還る路】

小説

第四章 西暦三十一年

第一節 春

第六項 やもめの息子を復活させる

士官の僕を癒した後、イエスはナインという町へ向かわれた。

そこは、カペルナウムから南西へ、およそ三十五キロ。
途中、イエスの郷里であるナザレからほど近いところを通るが、そのナザレからは、南南東へおよそ十キロほどの場所にある町である。

イエスの後には、弟子たちと大勢の人々が続いていた。
「今度はナインの町か…」「そうみたいだな。まだ先は長いぞ」

丘を下るにつれて、その先に町の姿が見えてきた。
町の門に近づくと、やたらと人の姿が多くみられた。

「……あれ、葬式じゃないか?」ペテロが足を止めた。
町の門から、葬列が出てくるところだった。遺体を載せた台を、男たちが担いでいる。
その後ろには、泣きながら歩く人々が大勢いる。

「若い男だ……」ヨハネがつぶやいた。

遺体のすぐそばで、一人の女が泣いていた。その若者の母親である。
夫を亡くした、やもめだった。そして今、その一人息子まで失ったのだ。

彼女にとって息子は、生活の苦楽を分かち合うただ一人の身内であった。
そして、これからの暮らしを支えてくれるはずの存在でもあった。
その息子を失い、これから何を生き甲斐に、そして誰を頼りに生きていけばよいのか…

イエスはその母親を見ると、深く憐れみ、彼女に言った。
「泣かないでください。」
そして、遺体を載せた台に近づいて触れた。

担いでいた人たちが、足を止める。
弟子たちも息をのんだ。

「先生……」ペテロが思わず声をかける。

イエスは静かに遺体へ目を向けた。
「若者よ、さあ、起き上がりなさい!」

すると、死んでいた若者が体を起こした。
そして、話し始めた。

「……!」

周囲から、驚きの声が一斉に上がる。
母親は息子を見つめたまま、言葉を失っていた。

イエスは、起き上がった息子を母親に渡した。

「生きてる……」誰かが震える声でつぶやいた。
人々の間に、深い畏れが広がっていく。「こんなことが……」
弟子たちも息をのんだ。

やがて、人々は神をたたえ始めた。
「偉大な預言者が私たちの中に起こされた!」
「神がご自分の民を顧みてくださった!」

この出来事、そしてイエスに関する話は、瞬く間にユダヤ全土とその周辺のすべての地方に広まった。

挿絵・ビジュアル制作には、ChatGPT および Google Gemini を使用しています。

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