第四章 西暦三十一年
第一節 春
第六項 やもめの息子を復活させる
場所 ガリラヤ/ナインの町
士官の僕を癒した後、イエスはナインという町へ向かわれた。
そこは、カペルナウムから南西へ、およそ三十五キロ。
途中、イエスの郷里であるナザレからほど近いところを通るが、そのナザレからは、南南東へおよそ十キロほどの場所にある町である。
イエスの後には、弟子たちと大勢の人々が続いていた。
「今度はナインの町か…」「そうみたいだな。まだ先は長いぞ」
丘を下るにつれて、その先に町の姿が見えてきた。
町の門に近づくと、やたらと人の姿が多くみられた。
「……あれ、葬式じゃないか?」ペテロが足を止めた。
町の門から、葬列が出てくるところだった。遺体を載せた台を、男たちが担いでいる。
その後ろには、泣きながら歩く人々が大勢いる。
「若い男だ……」ヨハネがつぶやいた。
遺体のすぐそばで、一人の女が泣いていた。その若者の母親である。
夫を亡くした、やもめだった。そして今、その一人息子まで失ったのだ。
彼女にとって息子は、生活の苦楽を分かち合うただ一人の身内であった。
そして、これからの暮らしを支えてくれるはずの存在でもあった。
その息子を失い、これから何を生き甲斐に、そして誰を頼りに生きていけばよいのか…
イエスはその母親を見ると、深く憐れみ、彼女に言った。
「泣かないでください。」
そして、遺体を載せた台に近づいて触れた。
担いでいた人たちが、足を止める。
弟子たちも息をのんだ。
「先生……」ペテロが思わず声をかける。
イエスは静かに遺体へ目を向けた。
「若者よ、さあ、起き上がりなさい!」
すると、死んでいた若者が体を起こした。
そして、話し始めた。
「……!」
周囲から、驚きの声が一斉に上がる。
母親は息子を見つめたまま、言葉を失っていた。
イエスは、起き上がった息子を母親に渡した。
「生きてる……」誰かが震える声でつぶやいた。
人々の間に、深い畏れが広がっていく。「こんなことが……」
弟子たちも息をのんだ。
やがて、人々は神をたたえ始めた。
「偉大な預言者が私たちの中に起こされた!」
「神がご自分の民を顧みてくださった!」
この出来事、そしてイエスに関する話は、瞬く間にユダヤ全土とその周辺のすべての地方に広まった。
本作に引用されている聖書の言葉・表現の着想は、King James Version(1769)、 SBL Greek New Testament(© Society of Biblical Literature, CC-BY 4.0)およびWestminster Leningrad Codex をもとにしており、翻訳補助に Google 翻訳等の機械翻訳ツールを使用しています。
挿絵・ビジュアル制作には、ChatGPT および Google Gemini を使用しています。
© 2026 Yurika Shiohara
Text and illustrations
by Yurika Shiohara


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