第32話|地の塩・世の光 ~山上の垂訓②

小説

第四章 西暦三十一年

第一節 春

第四項 山上の垂訓

2.地の塩・世の光

「あなたがたは地の塩です。だが、もし塩が塩気を失うなら、その塩は何によって再び塩になるでしょうか。
もはや何の役にも立ちません。ただ外へ投げ捨てられ、人々によって踏みつけられるだけです。」

「そうだよな……。死海の塩って、石みたいなものが混じっているだろ。」
「ああ。塩気が抜けたら、残るのは役に立たないものだけだ。料理にも使えないしな。」
イエスの話は、人々の日々の暮らしにある身近なものばかりだった。その身近な出来事を通して、人々はこれまで気づかなかった新たな視点へと導かれていった。

イエスは続けた。

「あなたがたは世界の光です。山の上にある町は、隠れることができません。また、人々は、ともしびを灯して、それを穀物を量る升(ます)で覆ったりはしません。そうではなく、燭台の上に置きます。すると、それは家の中にいるすべての人を照らします。

このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせなさい。そうすれば、人々はあなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるでしょう。

わたしが律法あるいは預言者たちを廃棄するために来た、と思ってはなりません。廃棄するためではなく、成就するために来たのです。

まことに、わたしはあなたがたに言います。天地が過ぎ去るまで、律法から一つのヨータ(ι)も、一つの角(文字の小さな画)も、決して過ぎ去ることはありません。すべてのことが起こるまでは。

ですから、これらの最も小さい戒めの一つでも破り、そのように人々へ教える者は、天の王国で最も小さい者と呼ばれます。しかし、それを行い、また教える者は、天の王国で大いなる者と呼ばれます。

わたしはあなたがたに言います。もしあなたがたの義が、律法学者たちやパリサイ人たちの義にまさって豊かでないなら、あなたがたは決して天の王国に入ることはありません。」

群衆の間には戸惑いが広がった。

「律法学者やパリサイ人以上の義……。」
「あの人たちより正しく生きるなんて、私たちにできるのか……。」

しかしイエスは、その答えを語るかのように、続けて口を開かれた。

挿絵・ビジュアル制作には、ChatGPT および Google Gemini を使用しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました